どのようなきっかけでこの職業についたのですか?
もともと車やバイクなど機械を自分でいじることが好きだったこともありますが、以前から人と機械に興味を持っていましたので、人と機械を結びつけることができる医療の道、臨床工学技士を選びました。
これからの医療機器はどんどん高度化していきます。それに合わせて人間がどのように生活を変化させていくのかとても興味があります。
現在の仕事の内容を教えて下さい。
医療機器の管理、カテーテル治療、ペースメーカー業務、人工透析を含めた血液浄化療法を行っています。
カテーテル治療などは医師・看護師とのチームで治療に当たりますが、ペースメーカーの外来や透析での穿刺など、直接患者さんに接する機会も多い仕事です。私が働いている病院は救急もある総合病院なので、月に数回当直もします。
他には、「日本DMAT」(厚生労働省が養成している災害医療派遣チーム)などの災害医療に関する研修に参加し、臨床工学技士としては数少ない日本DMATのインストラクターになりました。病院内の災害対策だけでなく、国や県が行う災害訓練にも中心的な役割として参加しています。
この職業の魅力、やりがいなどを教えて下さい。
病院という職場は、臨床工学技士を含め、国家資格を持ったプロフェッショナルが集まっている場所です。失敗は許されない仕事なので、「できて当たり前」というところがあります。とくに高度な技術を必要とするチーム医療では多いかもしれません。チームの一人ひとりが努力し、「当たり前」のレベルをいかにして上げるのか。そして、それによって目の前の医療の質が変わります。臨床工学技士もチームの一員です。
患者さんの前に出る仕事以外で感謝されることは少ないかもしれませんが、チームのメンバーに認められ、さらなる上を目指して挑戦するこの仕事はやりがいがあります。
臨床工学技士を目指す上で、必要となる資質は何ですか?
臨床工学技士の仕事は1人で行う仕事ではありません。チーム医療の一員として患者さんの治療にあたります。そのため、患者さんとの意思疎通だけでなく、周りのメンバーとのコミュニケーションが重要になります。おろそかになると適切な治療を行えないだけでなく、重大な医療事故にも繋がりかねません。
チーム内の専門職として機器や治療方法にも意見を言える知識も必要となってきます。技術の進化は日進月歩です。常に学び、チームに貢献していかなくてはなりません。
「人と明るくコミュニケーションがとれること」、「好奇心を持って様々なことに挑めること」、それこそが臨床工学技士に大切なことだと考えます。
今後の目標、夢は何ですか?
災害医療に携わる中で、「大規模災害時の医療を考える研究班」に臨床工学技士として参加しています。臨床の医療やそれに関わる機器・設備まで携わるのが我々の日常とする業務ですが、災害時でも途切れなく医療が提供できるように病院のBCP(事業継続計画)を策定しておかなくてはなりません。その内容を考える上で臨床工学技士は欠かすことができない存在となっています。
日本DMATの隊員数は全国で1万2千人を超えました。しかし、臨床工学技士のインストラクターは全国でわずか5名程度です。南海トラフや東海地震などの大災害に備えて、取り組む課題はたくさんあります。
日常の臨床業務だけでなく日本の災害医療の役に立てるように日々努力していければと思っています。