メッセージ

どのようなきっかけでこの職業についたのですか?

医療の仕事に就きたいと考え始めるようになったのは、私が小学校高学年の頃、父親が病気に罹ってしまったことがきっかけです。父親が心配で私は何も考えられないような状態になりました。しばらくして冷静に考えられるようになった時、自分のような経験をする人を少しでも減らしたいと思い、医療の仕事を目指そうと考えるようになりました。
その思いはずっと続きました。高校2年生になって進路について考え始めた頃、医療の仕事について調べる中で出会ったのが臨床工学技士です。私は幼い頃から機械をいじることが好きで、いろいろな機械を解体したり修理したりする理系の学生でしたので、すぐに臨床工学技士になろうと決意しました。

就職先はどのように選びましたか?

2014年に卒業後、湘南鎌倉総合病院に入職しました。私は専門学校在学中に循環器系に興味を持ち、できればこの領域の治療に関わりたいと考えていました。湘南鎌倉総合病院にはこの領域の治療に優れた先生がいらっしゃいましたので、それが志望した理由の1つです。また、湘南鎌倉総合病院では臨床工学技士を治療現場に積極的に関わらせ、また、教育・研修も積極的に行っているということが理由の2つ目。3つ目は学校の先輩がすでに何人か入職していたという点です。

入職後、どのような仕事をされましたか?

入職1年目の途中から希望していた心臓カテーテル室に配属していただきました。以来、4年近く主に心臓カテーテル室で勤務しています。心臓カテーテルの業務は虚血部門と不整脈部門の2つの部門に大きく分かれます。虚血部門では、心臓に栄養を送る血管である冠動脈が狭窄する狭心症や急に詰まってしまう急性心筋梗塞を、バルーンやステントを使用して治療を行っています。一方、不整脈部門は心臓の脈が速くなったり遅くなったりするのを正常に戻すために、補助を行うペースメーカーを植え込んだり、心筋を焼灼するアブレーションを行っています。
当院ではこのほか、首、鎖骨下、腎臓、足など心臓以外の血管でもカテーテル治療を行っています。
心臓カテーテル室の業務は、医師をはじめ看護師、臨床工学技士、診療放射線技師、臨床検査技師など多職種で連携して行います。当院には現在30名強の臨床工学技士がおり、透析室、手術室、心臓カテーテル室、内視鏡室、高気圧酸素室、機器管理室などに各自配属されています。

臨床工学技士の仕事において心掛けていることを教えてください

当院の心臓カテーテル室における大きな特徴で、臨床工学技士にはチーム医療をマネージメントするという重要な役割が課せられています。例えば、検査および治療のスケジュール管理は、臨床工学技士が行っています。医師のスケジュールを確認し、患者さんと治療を行う医師の組み合わせを調整しながらスケジュールを立てていきます。また、当院では臨床工学技士が控えるME室が手術室やICU(集中治療室)、ECU(救急治療室)に隣接したところにあります。これは患者さんの生命を左右するような緊急事態になった時、真っ先に駆けつけられるようになっています。
チーム医療の一員として臨床工学技士に不可欠なスキルは、コミュニケーション能力に尽きると思います。患者さんの治療のために、さまざまな医療職が力を合わせた一糸乱れぬチームプレーが必要です。そのため臨床工学技士には各医療職との円滑なコミュニケーションが要求されます。
患者さんとのコミュニケーションも大切であることは言うまでもありません。心臓カテーテル治療は局所麻酔下で行われるので患者さんとの会話が可能です。緊張している患者さんの気持ちを和ませるために雑談などしながら業務を行ったりすることもあります。実は学生時代、臨床工学技士は単に医療機器を介して患者さんと接するだけと考えていました。
しかし、実際は患者さんと直接会話し、緊張をほぐしたりするのも臨床工学技士の大切な役割なのです。臨床工学技士になって初めて、思っていたより患者さんとの距離が近かったことに気づき驚きました。検査や治療の後に患者さんからお礼の言葉をいただくことも多いのですが、初めてお礼の言葉をいただいた時は感激しました。
私は臨床工学技士を志した高校生の頃から、コミュニケーション能力が大切だと感じていました。お客様相手にコミュニケーション能力を培おうと思い、専門学校に入学後、すぐに近くのフルサービスのガソリンスタンドでアルバイトすることにしました。いろいろなお客様がいますから上手に対応しなければなりません。従業員同士のつきあい方も大切です。学校を卒業するまでの3年間働き、それなりにコミュニケーション能力を身に付けることができたと感じています。
臨床工学技士を目指す人に助言したいのは、知識は後で身に付けることができるが、コミュニケーション能力は一朝一夕には身に付かないということです。日頃から人とコミュニケーションを上手に取ることを心掛けることが大切だと思います。

海外や僻地離島医療の活動にも興味があるとうかがっていますが

当院ではアジアやアフリカなどの開発途上国に対し、透析センター開設のための支援を行っています。当院からも透析機器のメンテナンスや現地で透析を行うスタッフの人材育成のため、臨床工学技士が派遣されることがあります。逆に現地のスタッフを当院に受け入れ、研修を行うこともあります。
また、徳洲会グループは僻地離島医療にも力を入れており、各グループ病院の臨床工学技士が数カ月単位の交代で透析関連の応援に行くこともあります。
私もいずれは自分の勤務する病院外でも力を発揮したいと考えています。また、違った場所に移ると別の角度で自分を見つめ直すことができるので、それが成長につながればと思っています。

臨床工学技士の未来についてどのように考えていますか?

今、臨床工学技士で指導的な立場になっておられる先輩方は、臨床工学技士という医療職がほとんど知られていない時代に医療現場に入られたとお聞きしています。先輩方が大変な苦労をして道を切り開いてこられた後に、臨床工学技士として働き始めた20代、30代の私たちはかなり恵まれた環境にあると言えるでしょう。
医療職の中では比較的歴史の浅い臨床工学技士の分野は、さまざまな可能性を拡げる“伸びしろ”があるのではないでしょうか。近年、医療の進歩は著しく、新しい医療機器がどんどん開発されており、その分、他のニーズが増える可能性が十分にあると考えます。また、そうした新しいニーズに応える役割を、ほかの医療職でなく私たち臨床工学技士が担いたいと思います。

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